2014年06月14日

読み語り「こころ座・風間操が描く 宮沢賢治の世界」

DSC_0517.jpg風間操 宮沢賢治チラシ表のコピー.jpg5月22日(木) 聖公会八王子復活教会聖堂にて市民活動団体おおきに主催の「こころ座・風間操が描く宮沢賢治の世界」と題した読み語り会が13時から(19人参加)と19時から(17人参加)の2回開催されました。
「おおきに」はJOYCCO事務所の1階でコミュニティーアートスペース“スペース0☆100”を運営している団体ですが、その0☆100で毎月第3木曜日13:00〜14:30に開かれる風間操先生の読み語り講座には、JOYCCO仲間も多く受講しています。
そして、こころ座の風間さんといえば、くりちゃん広場の講座やまめっこの「うさぎのお月見キャンプ」他様々なシーンでいつも親身にご尽力下さっている、親しみやすい笑顔と穏やかで柔らかな語り口が素敵なJOYCCOにとっても馴染み深い役者さんです。
ということで、今回の読み語り会にはJOYCCOの受講生もおおきにの読み語り講座仲間として協力したのですが、通常JOYCCOでは子どもたち、または親子を対象に活動していますので、大人対象の読み語り会というのは新鮮で楽しいものでした。
 
会場にお借りした八王子復活教会聖堂は、八王子の中心街という便利な場所にありながら、驚くほど静かで、清潔感漂う美しい教会でした。舞台に使わせて頂いた祭壇には日中は自然の陽光が明るく降り注ぎ、夜は厳かに温かな明かりが灯され、祭壇に飾られた白百合も芳しく、紫のドレスを身に纏った風間さんも一層輝いて素敵に見えました。

さて、公演の内容は、まずはUさんの奏でる小さなグロッケンシュビールによる賢治作曲の「精神歌」のメロディーに乗せて『注文の多い料理店』序の朗読でスタート。
次に、「やまなし」の語りを聴きながら小川の底に住む蟹たちの微笑ましいやりとりや詩情溢れる情景、季節の移ろいに想像を巡らせます。
その後、読み語り講座の紹介として行われた早口言葉で交流のひとときを楽しみ、再びグロッケンによる賢治作曲の「星めぐりの歌」が演奏されると、一気にイーハトーブの世界へと観客の心は引き戻され、いよいよ「よだかの星」の語りとなりました。
「よだかの星」は知らない人はないくらいに有名な、賢治の代表作の一つですが、だからこそ、語り手、演技者によってはせっかくのイメージを台無しにされてしまったとがっかりしてしまうことも多い作品だろうと思います。
風間さんの語りには、大袈裟な演技や際だった演出はありません。原作と語り手の間には程よい距離感があり、といって一本調子でもなく、一言一言がとても聞き取りやすく、観客の想像を素直に刺激してくれます。
静寂の中、時に優しく、時に愛らしく、そしてまた時に意地悪く、風間さんの声が響き、聴衆はじっくりと思い思いに想像の翼を広げて物語の世界に遊びます。
その容姿の醜さやみすぼらしさ、優しすぎる性格のせいもあって、蔑まれ、軽んじられ、いわれのない脅しを受け、追い詰められ、絶望していくよだかの心情、突き刺さるような孤独感に思いを馳せ、どこにも行き場のない辛さ、星になって今も燃え続けている青白い炎の美しさ等、会場に集った人たちみんなで賢治の世界を堪能したのでした。

大がかりな舞台装置や音響もなく、たった一人の役者による語りだけで、美しく厳しい自然の風景や、小さな生き物たちの心の機微などを想像し、初めて会った人たちも共通の世界観の中に浸り、ある意味原始的な感性を蘇らせてもらいました。
目に見える物がない分、耳に聞こえる派手な演出音のない分、より強く想像力を刺激され、原文の言葉をより深く味わうことができたように思います。
雑多な情報や溢れる色や光、そして多くの加工された音に囲まれ過ごす私たち。…時にはこんな厳選されたシンプルな世界で、じっくり静かにことばを味わい、空想の世界に浸る体験ができるのはとても感動的で嬉しいことでした。

風間さんの語り講座の受講生としては、語りの技の習得はともかく、ことばの面白さやお話の世界をより深く楽しみ、味わうところから、今後もゆっくり焦らず、受講していきたいとの思いも新たにしました。
語りに興味をお持ちになった方は是非講座にもご参加くださいね。(参加連絡はおおきにさんまで、よろしく〜(^.^))
受講生 Y.T
posted by joycco at 18:11| Comment(0) | 鑑賞会